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SPIRITS

OOKADO HIDEKAZU大門 秀一 インタビュー 04

どこにもないから、自分でつくる

――茶色か黒が主流だったギャリソンベルトにタンを入れて、それも主流になりましたね。

そう。元々、革にはなにもしないのが当たり前やった。コーティングのために革用のニスを塗ることはあったけど、それだけ。人間の皮膚と同じで、革も日焼けするんよ。その焼け具合が、何とも言えない良い色になるんやな。あの色は染めでは出せんから、お日さんに任せる。ただ厄介なことに、3年くらい待たんとそういう色にはならんのよ。

もともとの革にクリームを塗って手を入れていくと、オリジナルのものができあがってくるじゃん。通常のお客さんはそこまで辛抱をしないから、俺が3年くらい使ったものを欲しいって言われたりしたこともあったよ。90年代になってジーンズ文化を育てようという雰囲気が出てきた頃、合わせてみんながタンの味わい深さに気付くようになったんやね。

まっさらの革にオイルを入れることもあるんやけど、あれは革屋さんからすると完全に邪道。当初はそんなもん作るなと言われたんだけど、俺がやっちゃったんだよね。いろんな貿易上の問題があって、アメリカから革が入らなくなった。じゃあどうするってことで、日本で手に入るのがヌメしかないから、それを使って少しでもラティーゴみたいなオイルレザーに近いものを作ろうと。ヌメはもともと硬い革でね。そのままでは扱いにくいからとりあえずオイルを塗ろうと思った。商品ができてしまってからオイルがつくとシミになるから嫌がられるけど、先に入れてしまえばええやんと。

一番いいのは鯨油なんだけど、高くて手に入らん。それで魚油を使ったんやけど魚臭い。色落ちもするからこれはアカンと思って、いろいろ探しに行ったよ。それで見つけたのがイングランドで作られたオイルなんやけど、日本と同じで湿気が多いから、成分が合ったんやね。アメリカのオイルは脂質が全然違ってベタベタになっちゃうから、本当は使いたくない。アメリカではそれくらいやらないと乾燥しちゃうんだけどね。で、このオイルならええと買ってきて日本でいろいろ分析して、成分はそのままで香料を抜いたりした。それを使ったら随分マシになったね。匂いも良くなった。

こうやって自分で考えて動くことで商品も良くなるし、色落ちの問題にしろ匂いの問題にしろ、方向が決まってくる。僕は商品作りもするけど、こういうところを追求したくなるんよね。それが面白くて。なんでも手に入る時代じゃなかったしインターネットもなかったから、自分が考えてどうこうしようとするまでは、何もないのよ。ないからそれに近いことをしてみせる、って発奮した。失敗するかもしれんけどやってみる。できたものは多分、他にはないものだから。

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