氏が設計し、今ではファニープロダクトの人気商品として定番中の定番となっているライダースワレットについてなど、ファニー時代の思い出を語ってくれた。
「ライワレの設計は自分でもよくできたと思います。
あれの設計をしてる時、常に考えていたのは、まず作る側にとってシンプルな事。
そして使う側も使いやすい事。
それからファニーで使ってる革にとって、何が一番ベストか。
それしか考えてなかった。
その結果がああなった。
シンプルだもんね。
内部は平の状態を積み重ねて行くだけ。作りも構造も単純頑丈だし、使う方も”おお、結構たくさん入るっ”てね。ポケットの数も多いですし。」
そんな流れから話はマスターとの思い出話しに。
「マスターに育てられた思うのはね、ウェスタンのラインを簡単に出せること。
ウェスタンのラインてあるじゃないですか。
こういうカーブを書くとウェスタンに見えるというライン。
アールの形とかあるでしょ、それを簡単に出せるんですよ。
とにかくそれを叩き込まれた。
1ミリちょっと違っただけでカーブの表情がガラリと変わるんです。そのさじ加減で”ウェスタン”に見える感じというのがある。
唐草であったりしてもヨーロピアンには見えちゃいけない。普通はそのラインを出せと言われても出来ないもんなんですよ。
パルテノン神殿とかの時代からある模様、ラインが源流なのかなとも思えるくらいウェスタンのラインってのは似ていると思うんですが、基本的にはそんなところから綿々と受け継がれてきたデザインなんでしょうね。
でもヨーロピアンの唐草とウェスタンの唐草とは全く違うものに見える。
それがラインのちょっとした違いだったりするんですよ。
それを簡単に表現できるようになるまで身体に叩き込まれた。
自分がキレイなラインを出したら、相手はそれで納得する。
途中で絶対に投げ出すな、妥協するな、と。
ひとつの商品作るのにも、ラインを出すのにはとにかくうるさく、何度も何度も試作を繰り返しましたね。
いろいろ見てきたけど”ここでやめとこうか”という人より、とことんやった人の方が息が長い。自分が自信を持って出してる商品なだけに、息が長いという気がします。その加減次第で商品寿命が如実に出てくるのかも知れませんね。」
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